📝 解説記事|運転者の労働時間のルールを守りたい(運送業)
2024年問題の最大の落とし穴は「年間960時間」だけを見ること
公開日: 2026年10月2日 更新日: 2026年10月10日
こんにちは。
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所の吉元です。
今回は、運送業の経営者・経営幹部、人事総務担当者の皆さまにとって、今も重要なテーマである「2024年問題」についてお話しします。
2024年4月から、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用されました。
この「2024年問題」について、
「ドライバーの時間外労働は年間960時間以内にすればいい」
と理解している方も少なくありません。
しかし、ここには大きな注意点があります。
「年間960時間以内なら大丈夫」というだけでは、自社の労務管理が適正なのかを判断できません。
運送会社の2024年問題を考えるうえで重要なのは、36協定の内容と、その協定に沿った実際の労働時間管理です。
■そもそも「2024年問題」とは?
2024年問題とは、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が、これまで適用猶予されていたトラックドライバーにも2024年4月1日から適用されたことを背景とする、物流・運送業界のさまざまな課題を指す言葉です。
運送業では、これまで長時間労働が問題となってきました。
そこで、トラックドライバーについても時間外労働に上限が設けられました。
ただし、運送業の労務管理を考える際には、
「960時間」という数字だけを見るのでは不十分です。
ここが今回お伝えしたいポイントです。
■「年間960時間以内だから大丈夫」は本当か?
例えば、ある運送会社が、
「うちのドライバーは年間960時間を超えていない」
と確認したとします。
一見すると、問題がないように思えるかもしれません。
しかし、実際には36協定で会社が定めている時間外労働の上限と、実際の労働時間との関係を確認する必要があります。
36協定とは、会社が法定労働時間を超えて労働させる場合などに、労使間で締結し、労働基準監督署へ届け出る労使協定です。
つまり、
「法律上の上限」だけを見るのではなく、「自社が届け出た36協定」も確認しなければならない。
ということです。
■運送業の2024年問題で重要なのが「36協定」
労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間を超えて労働させることはできません。
時間外労働を行うためには、36協定の締結・届出が必要になります。
そして、36協定を締結したからといって、会社が無制限に残業を命じられるわけではありません。
36協定には、時間外労働をさせることができる時間などを定めます。
したがって、運送会社の労務管理では、
①法律上の上限
②自社が締結・届出した36協定の内容
③実際のドライバーの労働時間
この3つを確認することが重要です。
■意外と見落とされる「36協定の書き方」
運送業の36協定には、一般の事業場とは異なる点があります。
トラックドライバーについては、時間外労働の上限について特例的な取扱いがあります。
そのため、36協定の内容を正確に理解していないと、
「年間960時間まで残業できると思っていた」
「960時間以内だから問題ないと思っていた」
という認識と、実際に届け出ている36協定の内容が食い違ってしまう可能性があります。
例えば、36協定の記載内容によっては、会社が想定していたよりも時間外労働の上限が低く設定されているケースも考えられます。
重要なのは、
「国が定めた960時間」だけではなく、「自社が実際に届け出ている36協定はどうなっているのか」
を確認することです。
■「届出した36協定」と「実際の労働時間」を照らし合わせる
36協定は、単に作成して労働基準監督署へ届け出れば終わり、というものではありません。
実際の労働時間が、届け出た36協定の内容に沿っているかを継続的に確認する必要があります。
例えば、
・36協定で定めた時間外労働の上限
・特別条項の有無
・特別条項を適用できる場合の条件
・実際の時間外労働時間
・休日労働の状況
・年間を通じた労働時間の推移
などを確認していくことが重要です。
つまり、36協定は「書類」ではなく、会社の労働時間管理のルールとして運用する必要があります。
■2024年問題は「ドライバーの残業を減らす」だけの問題ではない
2024年問題というと、
「ドライバーの残業時間を減らさなければならない」
というイメージが強いかもしれません。
もちろん、長時間労働を抑制し、ドライバーの健康や安全を守ることは重要です。
しかし、経営者の立場から考えると、それだけではありません。
労働時間が変われば、
・運行計画
・配車
・運賃
・車両の稼働
・ドライバーの賃金
・荷主との取引条件
・人員配置
・採用・定着
など、会社の経営全体に影響します。
だからこそ、2024年問題は単なる「残業規制への対応」ではなく、運送会社の経営と労務管理を見直す機会として考える必要があります。
■運送業以外の会社にも「36協定」は関係する
ここまで運送業を中心に説明してきましたが、36協定と時間外労働の上限規制は、運送業だけの問題ではありません。
建設業や医療業など、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された業界もあります。
また、それ以外の業種でも、時間外労働の管理は企業経営における重要な労務管理のテーマです。
「うちは運送業ではないから関係ない」
ということではありません。
自社の36協定がどのような内容になっているのか。
実際の時間外労働は、その協定の範囲内に収まっているのか。
経営者や人事総務担当者が一度確認してみる価値があります。
■「残業時間を短く届け出ればいい」という考え方は危険
36協定について、
「とりあえず短めに書いておけばいい」
「実際にはそんなに残業しないことにしておこう」
といった考え方をするのは適切ではありません。
大切なのは、自社の実態を踏まえて労使で協議し、適切な内容の36協定を締結・届出し、その内容に沿って労働時間を管理することです。
36協定は、労働基準監督署に提出するためだけの書類ではありません。
会社と従業員が、
「どの程度の時間外労働が想定されるのか」
を確認するための重要な労使協定です。
■2024年問題への対応は「制度」から「経営」へ
運送会社が2024年問題に対応するためには、36協定を確認するだけで終わりません。
例えば、
・運行ルートの見直し
・荷待ち時間の削減
・荷役作業の効率化
・配車の見直し
・適正な運賃の収受
・ドライバーの採用・定着
・賃金制度の見直し
・労働時間管理の改善
など、さまざまな取り組みを組み合わせる必要があります。
つまり、
「労働時間を減らす」ことと「会社を維持・成長させる」ことを、別々に考えない。
これが、これからの運送会社には重要だと考えています。
■まずは自社の36協定を確認してみる
2024年問題への対応で、まず取り組みやすいのは、現在の36協定を確認することです。
経営者・経営幹部・人事総務担当者の皆さまは、ぜひ一度、
「自社のドライバーについて、どのような36協定を届け出ているのか?」
「実際の労働時間は、その36協定の内容に沿っているのか?」
「960時間という数字だけを見て、安心していないか?」
を確認してみてください。
2024年問題は、2024年4月に始まったからといって終わった問題ではありません。
時間外労働の上限規制を前提として、これからどのように運送会社の仕事の進め方や労務管理を変えていくのか。
そこまで考えることが、これからの運送業経営には求められます。
そして、その第一歩が、自社の36協定と実際の労働時間を正しく把握することなのではないでしょうか。
運送業の36協定、労働時間、賃金制度、就業規則などについて、運送業の実態を踏まえて考えたい経営者・人事総務担当者の方は、ぜひ一度、自社の制度を見直してみてください。
詳しい内容は、こちらの記事でも解説しています。
▶︎ 【運送業の❝気になる話❞】2024年問題 最大の落とし穴
https://note.com/yutoli_sr/n/n71270d49338f
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