📝 解説記事|運転者の労働時間のルールを守りたい(運送業)
運送会社の賃金制度、歩合給と固定給はどう考える?
公開日: 2026年10月2日 更新日: 2026年10月10日
こんにちは。
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所の吉元です。
「ドライバーの給与をどう決めればいいのか分からない」
「歩合給と固定給、どちらが自社に合っているのだろう?」
「採用や定着を考えると、今の賃金制度のままでいいのだろうか?」
運送会社の経営者の方から、このようなご相談を受けることがあります。
運送業では、ドライバーの賃金として「歩合給」が長く使われてきました。
走行距離、配送件数、売上、荷物の個数など、仕事の成果を数字で把握しやすいことから、成果を給与に反映させる仕組みを作りやすいからです。
一方で、最近はドライバーの採用・定着、労働時間管理、2024年問題などを背景に、賃金制度そのものを見直す運送会社も増えています。
そこで今回は、運送会社の賃金制度を考えるうえで基本となる「歩合給」と「固定給」について整理してみます。
■運送会社で歩合給が使われてきた理由
歩合給の特徴は、仕事の成果が給与に反映されることです。
運送業では、
・走行距離
・配送件数
・売上
・荷物の個数や重量
・担当コース
・運行内容
など、さまざまな指標を給与に結びつけることができます。
実際には「距離歩合」「件数歩合」「売上歩合」「荷扱い歩合」「コース歩合」など、会社によって仕組みはかなり異なります。
そのため、「歩合給」と一言でいっても、その中身まで確認しなければ、自社の賃金制度を正確に把握することはできません。
■固定給にはどんな特徴がある?
固定給は、基本給や職務給など、あらかじめ決めた金額を毎月支払う賃金体系です。
固定給の大きな特徴は、毎月の収入を予測しやすいことです。
特に、
・若手ドライバー
・未経験者
・家族を持つドライバー
・転職を検討している人
にとって、毎月どの程度の収入になるのか分かりやすいことは、会社選びの材料になります。
そのため、採用・定着という観点から、固定給の安定性を重視する運送会社もあります。
もちろん、すべてを固定給にする必要はありません。
「固定給+歩合給」のように、収入の安定性と成果の反映を組み合わせる方法もあります。
■歩合給と固定給、それぞれにメリットと注意点がある
歩合給には、
・成果を給与に反映しやすい
・仕事量に応じて人件費が変動する
・成果を数字で評価しやすい
といった特徴があります。
一方で、
・仕事量によって収入が変動する
・計算方法が複雑になりやすい
・給与の決まり方が分かりにくくなることがある
・時間外労働に対する割増賃金の計算が必要になる
といった点には注意が必要です。
特に、
「歩合給だから残業代は必要ない」
という考え方は適切ではありません。
歩合給を採用している場合でも、法定時間外労働などに対する割増賃金の計算が必要になります。出来高払制の賃金については、通常の固定給とは異なる計算方法があります。
一方、固定給には収入が安定するというメリットがありますが、仕事量が増減しても人件費が固定化されるという面があります。
■大切なのは「歩合給か固定給か」だけではない
ここが、運送会社の賃金制度を考えるうえで重要なポイントです。
「歩合給がいいのか、固定給がいいのか」
という二択で考えてしまうと、自社に合った制度設計を見失うことがあります。
例えば、
・地場配送なのか長距離輸送なのか
・仕事量にどの程度の繁閑差があるのか
・若手ドライバーを採用したいのか
・経験豊富なドライバーを定着させたいのか
・成果をどのように評価したいのか
・ドライバーに給与の仕組みを説明できるか
・賃金規程と実際の給与計算が一致しているか
こうした点をまとめて考える必要があります。
賃金制度は、単に「毎月いくら払うか」を決める仕組みではありません。
採用、定着、人材育成、評価、労働時間管理、残業代、会社の人件費など、さまざまな経営課題につながっています。
■「昔からこの給与体系だから」で終わらせない
運送会社の賃金制度を拝見すると、
「昔からこの歩合率でやっている」
「先代の頃からこの計算方法」
「給与計算は以前から同じ方法」
というケースがあります。
もちろん、長年運用されてきたこと自体に意味はあります。
しかし、運送業を取り巻く環境が変化している現在、自社の賃金制度が今の採用環境や働き方に合っているのかを、一度確認してみることは大切です。
特に、
「ドライバーから給与について質問されることが増えた」
「採用しても若いドライバーが定着しにくい」
「歩合給の計算方法を説明しにくい」
「賃金規程と実際の給与計算が少し違っている」
「残業代の計算方法に不安がある」
という場合は、給与計算だけを見るのではなく、賃金制度そのものを確認することが重要です。
■運送会社の賃金制度は「経営の仕組み」
運送会社の賃金制度を考えるとき、私は「給与計算の問題」だけで捉えないことが大切だと考えています。
どのようなドライバーに来てもらいたいのか。
どのような働き方をしてもらいたいのか。
会社として何を評価するのか。
そして、その考え方を給与にどう反映するのか。
ここまで考えて初めて、賃金制度が「経営の仕組み」として機能します。
歩合給にも固定給にも、それぞれの特徴があります。
大切なのは、どちらを選ぶかということだけではなく、
「自社の運行形態・人材・経営方針に合った賃金制度になっているか」
を確認することです。
私は、運送業を専門とする社会保険労務士として、これまで運送会社の賃金制度、労働時間制度、就業規則、賃金規程などの整備・見直しに携わってきました。
「今の賃金制度が自社に合っているのか分からない」
「歩合給と固定給をどう組み合わせればいいのか」
「ドライバーの採用・定着につながる賃金制度を考えたい」
「賃金規程と実際の給与計算を確認したい」
このような場合は、まず現在の制度を整理するところから始めることができます。
運送会社の賃金制度は、採用・定着だけでなく、労働時間管理や残業代、会社の人件費にも関係する重要な経営課題です。
自社の賃金制度を一度整理してみてはいかがでしょうか。
