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社会保険労務士 吉元よしもと 康裕やすひろ
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所
📍 東京都江戸川区

📝 解説記事|労働基準監督署の調査が入った

労働基準監督署の調査はなぜ入る?医療・介護・運送の実務経験から考える労務管理の落とし穴

公開日: 2026年10月10日 更新日: 2026年10月10日

こんにちは。
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所の吉元です。

労働基準監督署の調査は、どのようなきっかけで入るのでしょうか。また、調査を受けた企業には、どのような問題があるのでしょうか。

私はこれまで、医療法人、介護法人、運送会社に対する労働基準監督署の調査を経験してきました。

業種は異なりますが、実際の経験を振り返ると、労働者からの申告、就業規則の未整備、労働条件通知書の更新不足、労働時間制度と実態の乖離など、共通する問題が見られました。

本記事では、労働基準監督署の調査が入る背景と、企業が見直すべき労務管理のポイントを解説します。

1.労働基準監督署の調査は何がきっかけで入るのか

労働基準監督署の調査は、一般に「臨検監督」と呼ばれます。労働基準法や労働安全衛生法などの関係法令が守られているかを確認するために行われます。

調査のきっかけには、定期的な監督、労働者からの申告、長時間労働や労働災害などに関する情報があります。

私が経験した事例でも、労働者が労働基準監督署に申告したことが調査につながったケースがありました。

例えば、残業代が正しく支払われていない、休憩時間が確保されていない、会社が定めた労働時間と実際の勤務が違うといった問題です。

会社側は大きな問題だと考えていなくても、労働者との認識の違いが申告につながることがあります。

厚生労働省が公表した令和7年度の監督指導結果によると、長時間労働が疑われる29,150事業場のうち、11,228事業場で違法な時間外労働が確認されています。

これは、長時間労働が疑われる事業場を対象とした調査結果です。すべての企業に当てはまる数字ではありませんが、労働時間管理が重要な確認事項であることが分かります。

出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」

2.医療・介護・運送の調査経験から見えた7つの問題

私が経験した調査を振り返ると、次のような問題が共通して見られました。

① 労働者から労働基準監督署への申告

労働者からの申告は、調査のきっかけの一つです。

未払い残業代や労働時間などについて、会社と労働者の認識が食い違っていると、問題が表面化することがあります。

日頃から労働条件や給与計算について説明し、疑問や不満を把握できる職場環境を整えることも大切です。

② 就業規則が作成されていない、または整備されていない

就業規則が作成されていない企業や、作成されていても実態に合っていない企業があります。

ここで、私が事業者にお伝えしていることがあります。

「10人未満だから作成義務なしではなくて、届け出義務がないだけです。従業員数に関係なく就業規則は今回のように問題が発生した場合、法人にとってリスク回避となります。」

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。一方、常時10人未満の事業場には、労働基準法上の作成・届出義務はありません。

ただし、10人未満だからといって、就業規則を整備する意味がないわけではありません。

労働時間、休日、休暇、賃金、服務規律、懲戒などのルールを明確にしておくことは、労使間の認識の違いを防ぎ、問題が発生したときの対応を考えるうえで役立ちます。

就業規則は、届出義務の有無だけでなく、会社を守るための労務管理の基盤として考えることが重要です。

③ 労働条件通知書や雇用契約書が最新の法令に対応していない

入社時に労働条件通知書や雇用契約書を交付していても、その後の法改正や労働条件の変更に対応できていないケースがあります。

労働条件の明示ルールは改正されることがあります。例えば、2024年4月からは、就業場所・業務の変更の範囲など、明示事項が追加されました。

書類を一度作成して終わりにするのではなく、法改正や労働条件の変更に応じて、内容を確認・更新することが大切です。

④ 就業規則に定めた労働時間制度と実際の勤務が違う

就業規則では変形労働時間制などを定めていても、実際には制度に沿ったシフト表が作成されていない、勤務予定が適切に管理されていないといった問題があります。

労働時間制度は、就業規則に記載するだけで適切に運用できるものではありません。制度に応じた必要な手続きと、実態に沿った勤務管理が必要です。

規程上のルールと実際の働き方が一致しているか。 これは、日常の労務管理で確認しておきたい重要なポイントです。

⑤ 未払い残業代の請求

労働者から未払い残業代を請求されることも、企業が直面する問題の一つです。

残業時間の集計が不正確だったり、実際には労働時間に該当する作業が記録されていなかったりすると、未払い賃金が発生する可能性があります。

タイムカードなどの勤怠記録と、実際の業務内容、給与計算の資料を照合することが重要です。

固定残業代や歩合給を採用している企業では、賃金規程と計算方法が適切に整合しているかも確認しましょう。

⑥ 労働者の申告内容と会社の記録が食い違う

例えば、労働者が「休憩を30分しか取っていないので、労働時間は8時間30分だった」と申告するケースです。

このような場合、会社の勤怠記録に休憩時間が記載されていても、それだけで実際に休憩を取っていたと判断することはできません。

休憩中に業務から解放されていたのか、電話対応や利用者対応などを求められていなかったかなど、実態を確認する必要があります。

一方で、申告内容と会社の認識が違う場合には、勤務記録や業務の状況などを確認し、事実関係を整理することが大切です。

労働者の申告をそのまま事実と決めつけることも、会社側の記録だけを正しいと考えることも適切ではありません。

⑦ 36協定が届け出られていない

法定労働時間を超える時間外労働や法定休日労働をさせる場合、原則として36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

36協定を届け出ていないまま時間外労働をさせている場合は、法令違反につながります。

また、36協定を届け出ていても、協定の有効期間が切れていたり、定めた上限を超えていたりすれば問題になります。

毎年の更新時期や、協定内容と実際の勤務状況が一致しているかを確認しましょう。

3.調査で問題になるのは、書類の有無だけではない

ここまでの7つの問題を整理すると、企業の労務管理には3つの視点が必要だと分かります。

- 書類が整備されているか:就業規則、労働条件通知書、36協定など
- 制度が適切に設計されているか:労働時間制度、賃金制度、休憩・休日のルールなど
- 実態に沿って運用されているか:シフト表、勤怠記録、給与計算、実際の休憩状況など

書類を作成していても、実態と一致していなければ問題が生じます。逆に、現場では何となく運用できていても、ルールが明確でなければ、労働者との間で認識の違いが生まれる可能性があります。

書類・制度・実態の3つを整合させることが、労務管理の基本です。

4.労働基準監督署の調査を受けたときの基本対応

調査の連絡を受けたり、監督官が来訪したりした場合には、落ち着いて事実確認に対応しましょう。

まず、調査の目的や対象となる事項を確認し、求められた資料を準備します。

主な資料には、次のようなものがあります。

- 労働者名簿、労働条件通知書、雇用契約書
- 就業規則、賃金規程、36協定
- 出勤簿、タイムカード、勤怠システムの記録
- 賃金台帳、給与明細、残業代の計算資料

監督官からの質問には、事実に基づいて回答します。すぐに分からないことは確認してから回答し、記録を実態と異なる内容に修正することは避けなければなりません。

調査の結果、法令違反が認められた場合などには、是正勧告書が交付されることがあります。指摘内容を確認し、是正期日などを踏まえて改善を進め、求められた報告を行います。

対応方法に迷う場合には、社会保険労務士などの専門家に相談することも選択肢です。

5.今後に向けて企業が取り組みたい是正ポイント

調査を受けたときだけ対応するのではなく、日頃から労務管理を点検しておくことが重要です。

① 就業規則と関連規程を整備する

就業規則だけでなく、賃金規程、育児・介護休業規程など、自社に必要な関連規程も確認します。法改正や会社の実態に応じた見直しが必要です。

② 労働条件通知書を見直す

入社時に交付した書類が最新の法令に対応しているか、実際の労働条件と一致しているかを確認します。

③ 労働時間制度とシフト表を照合する

就業規則に定めた制度と、勤務予定や実績が一致しているかを確認します。変形労働時間制などを採用している場合には、必要な手続きや運用要件も点検しましょう。

④ 勤怠記録と給与計算を確認する

実際の労働時間が正確に記録されているか、休憩時間や残業時間が適切に処理されているかを確認します。未払い賃金が判明した場合には、必要な精算を進めます。

⑤ 36協定の届出と時間外労働の管理を徹底する

協定の有効期間、対象労働者、時間外労働の上限などを確認し、協定の内容と実態が一致しているかを定期的に点検します。

6.就業規則は、問題が発生してから考えるもので

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