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公的年金は本当に危ない?「年金財政」の仕組みを数字で考える
公開日: 2026年10月7日 更新日: 2026年10月10日
こんにちは。
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所の吉元です。
「年金は破綻するのでは?」
老後の生活を考えるとき、多くの人が一度は気になるのではないでしょうか。
特に「年金財政は赤字」「年金積立金を運用している」「GPIFの運用実績がマイナスになった」といったニュースを見ると、年金制度そのものが危ないように感じるかもしれません。
しかし、公的年金の財政を考えるには、個別の数字だけを見るのではなく、年金制度のお金がどこから入り、どのように使われているのかを知ることが大切です。
今回は、老齢年金を考えるうえでも知っておきたい「公的年金の財政」を、数字から整理してみます。
公的年金の財源は「保険料だけ」ではない
公的年金制度の財源は、大きく分けると、
* 保険料
* 国庫負担(税金)
* 年金積立金の運用収入など
によって構成されています。
例えば、令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です。
厚生年金については、保険料率18.3%を会社と従業員が折半して負担します。
また、基礎年金については、その財源の2分の1を国庫負担、つまり税金で負担しています。
つまり、「現在の現役世代が支払う保険料だけで、その年の年金をすべて賄っている」という単純な仕組みではありません。
公的年金は、複数の財源を組み合わせて運営されています。
年金積立金は「眠らせているお金」ではない
公的年金には、年金積立金があります。
この積立金は、将来の年金給付に活用するために運用されています。
その運用を担っているのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)です。
GPIFでは、国内外の株式や債券などに分散して長期運用を行っています。
ここで注意したいのが、
「四半期の運用実績がマイナスになった=年金制度が破綻する」
という考え方です。
これは、年金積立金の運用を考えるうえでは適切ではありません。
株式や債券などの金融資産は、短期間では価格が変動します。
そのため、ある四半期だけを切り取れば、運用実績がマイナスになることもあります。
一方、GPIFは長期・分散投資を基本として運用しています。
したがって、年金積立金の運用を見るときには、短期的な増減だけではなく、長期的な運用実績を見る必要があります。
実際の公的年金の収支はどうなっているのか
では、実際の数字を見てみましょう。
厚生年金と国民年金を合わせた収支を見ると、次のようになっています。
| 年度 | 収入 | 支出 | 差額 |
| ----- | ------: | ------: | -----: |
| 令和4年度 | 約52.9兆円 | 約52.1兆円 | 約0.8兆円 |
| 令和5年度 | 約52.8兆円 | 約50.2兆円 | 約2.6兆円 |
| 令和6年度 | 約54.0兆円 | 約50.9兆円 | 約3.1兆円 |
| 令和7年度 | 約57.6兆円 | 約55.7兆円 | 約1.9兆円 |
少なくとも、ここ数年の収支を単純に見て「毎年巨額の赤字が膨らみ続けている」という状況ではありません。
もちろん、これだけを見て将来の年金財政を判断することもできません。
重要なのは、公的年金の財政には、保険料、国庫負担、積立金など複数の要素があるということです。
年金積立金も数字を確認してみる
年金積立金についても、数字を見てみましょう。
厚生年金の積立金は、
* 令和4年度:約197.5兆円
* 令和5年度:約243.0兆円
* 令和6年度:約247.7兆円
* 令和7年度:約288.9兆円
となっています。
国民年金についても、
* 令和4年度:約10.4兆円
* 令和5年度:約12.5兆円
* 令和6年度:約12.7兆円
* 令和7年度:約13.6兆円
となっています。
もちろん、積立金の残高だけを見て年金制度の将来を判断することはできません。
しかし、少なくとも「年金積立金がなくなっている」というイメージとは、実際の数字には違いがあります。
「国の財政赤字」と「年金財政」は同じではない
もう一つ、混同されやすいのが「国の財政」と「年金財政」です。
国の一般会計では、税収だけでは歳出を賄えず、公債金に依存している状況があります。
一方、公的年金は「年金特別会計」という別の会計で管理されています。
つまり、
「国の一般会計が赤字だから、年金も赤字で破綻する」
という単純な関係ではありません。
国の財政と公的年金の財政は、分けて考える必要があります。
老齢年金を考えるとき、まず知っておきたいこと
老齢年金について考えるとき、
「将来、年金はもらえるのか?」
という疑問を持つのは自然なことです。
ただ、年金制度について考えるのであれば、「年金は危ない」「年金は破綻する」といった言葉だけで判断するのではなく、
どのような財源で運営されているのか
年金積立金はどのように運用されているのか
実際の収支はどうなっているのか
を確認することが大切です。
公的年金は、老後の生活を支える重要な社会保障制度です。
だからこそ、イメージやニュースの一部分だけではなく、制度の仕組みと数字を知ったうえで、自分自身の老後資金について考えていくことが重要です。
なお、「少子高齢化が進むと年金財政はどうなるのか?」という問題は、また別の論点です。
この点については、次回の記事で改めて考えてみたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
年金について、制度の仕組みから分かりやすくお伝えしています。
