📝 解説記事|家族が亡くなった・遺族年金をもらえるか知りたい
遺族年金はいくら受け取れる?「遺族年金」と「自分の年金」から考える生活保障
公開日: 2026年10月7日 更新日: 2026年10月10日
こんにちは。
YUTOLI社会保険労務士・FP事務所の吉元です。
「夫が亡くなったら、妻はいくら遺族年金を受け取れるの?」
遺族年金について考えるとき、多くの方が気になるのは、結局のところ「実際にいくらもらえるのか」ということではないでしょうか。
前回までの記事では、遺族基礎年金と遺族厚生年金の違いや、2028年から始まる遺族厚生年金の見直しについて取り上げました。
今回はもう一歩踏み込んで、遺族厚生年金の計算、自分自身の老齢年金との関係、そして生命保険をどのように考えるかについて整理します。
遺族厚生年金は「亡くなった人の年金額の4分の3」が基本
遺族厚生年金の額を考えるとき、基本となるのが亡くなった方の老齢厚生年金のうち、報酬比例部分です。
その4分の3を一つの目安として考えることができます。
例えば、亡くなった夫の老齢厚生年金の報酬比例部分が年間100万円だったとします。
この場合、
100万円 × 3/4 = 75万円
となり、遺族厚生年金の額は75万円が一つの基準になります。
ただし、ここで注意したいのが、妻自身も老齢厚生年金を受け取る場合です。
65歳以上の配偶者の場合、自分の老齢厚生年金との調整が行われるため、「75万円をそのまま受け取る」という計算にはなりません。
自分の老齢厚生年金があると、遺族厚生年金はどうなる?
具体例で見てみましょう。
夫が亡くなり、夫の老齢厚生年金の報酬比例部分が年間100万円だったとします。
妻は65歳以上で、自分の老齢厚生年金を年間60万円受け取っているケースです。
まず、遺族厚生年金の基本的な計算をします。
100万円 × 3/4 = 75万円
したがって、遺族厚生年金は75万円と考えられます。
ところが、65歳以上の妻については、自分の老齢厚生年金との調整があります。
この場合、別の計算方法による額を比較します。
夫の遺族厚生年金の基本額は75万円。
これに対して、
75万円 × 2/3 = 50万円
さらに、
妻自身の老齢厚生年金60万円 × 1/2 = 30万円
となります。
したがって、
50万円 + 30万円 = 80万円
となります。
75万円と80万円を比較し、このケースでは80万円を基準として考えることになります。
ここからが「先充て」です
では、妻が実際に受け取る遺族厚生年金はいくらになるのでしょうか。
ここで出てくるのが「先充て」という考え方です。
妻自身が受け取る老齢厚生年金60万円を、まずこの遺族厚生年金の額から充てる形になります。
計算すると、
**遺族厚生年金 80万円
- 妻自身の老齢厚生年金 60万円
= 遺族厚生年金 20万円**
となります。
つまり、このケースでは、
* 妻自身の老齢厚生年金:60万円
* 遺族厚生年金:20万円
となり、厚生年金部分として受け取る合計額は80万円です。
「遺族厚生年金が80万円だから、80万円に自分の老齢厚生年金60万円を加えて140万円もらえる」という意味ではありません。
この調整を知らないと、遺族厚生年金の金額を大きく見積もってしまう可能性があります。
なお、老齢基礎年金や障害基礎年金は、この調整とは別に考えます。
ここが、遺族年金を考えるうえで重要なポイントです。
「ねんきん定期便」で自分の年金を確認する
では、自分自身の年金額はどうやって確認すればよいのでしょうか。
身近な資料として「ねんきん定期便」があります。
50歳以上の方の場合、現在の加入条件が60歳まで続いた場合の、65歳以降の年金額の見込みを確認できます。
一方、50歳未満の方の場合は、これまでの加入実績をもとにした年金額が表示されます。
つまり、50歳未満の場合は、現在表示されている金額がそのまま65歳から受け取る年金額になるとは限りません。
自分の老齢基礎年金と老齢厚生年金がどの程度になるのかを確認しておくことは、将来の生活設計だけでなく、配偶者に万一のことがあった場合の生活設計にもつながります。
遺族年金だけでなく「家計全体」で考える
夫が亡くなった後の生活を考える場合、遺族年金だけを見ても十分ではありません。
例えば、
夫死亡後の収入
* 遺族年金
* 妻自身の老齢年金
* 妻自身の収入
* その他の収入
これに、
金融資産
を加えます。
そして、それらの合計と、
* 妻と子の生活費
* 教育費
* 住居費
* 子どもの結婚費用
* 葬儀費用など
* その他の支出
を比較します。
そこで不足する金額があれば、その不足分を生命保険などで準備するという考え方になります。
生命保険はいくら必要なのか?
生命保険について、
「3,000万円必要なのでは?」
「5,000万円くらい入っておいた方が安心なのでは?」
と考えることがあります。
しかし、本来は金額から決めるものではありません。
まず、
**遺族年金はいくらなのか。
妻自身の老齢年金はいくらなのか。
妻はどの程度働くのか。
金融資産はいくらあるのか。
夫死亡後の支出はいくらなのか。**
これらを確認します。
そのうえで不足する金額を計算すれば、必要な死亡保障の大きさも見えてきます。
逆に言えば、遺族年金や自分自身の老齢年金を確認しないまま生命保険の金額だけを決めても、その保障額にどの程度の根拠があるのか分かりにくくなります。
公的年金は「自分のための貯金」ではない
ここまで遺族年金の計算を見てきましたが、公的年金についてもう一つ知っておきたいことがあります。
公的年金は、単純に自分が払った保険料を積み立てて、将来自分が受け取る「貯金」のような制度ではありません。
老齢年金だけではなく、障害年金や遺族年金も含めた社会保険です。
若い世代であっても、病気やけがによって障害が残った場合や、家族を残して亡くなった場合には、年金制度による保障が関係してきます。
だからこそ、公的年金を「老後の貯金」とだけ考えるのではなく、人生のさまざまなリスクに備える社会保険として理解することが大切です。
そして、公的年金だけですべてを賄うのではなく、貯蓄や生命保険などを組み合わせて、自分の家計に必要な保障を考えていく。
それが、これからの生活設計では重要になります。
遺族年金の制度改正についても、「5年間しかもらえなくなる」という一部分だけを見るのではなく、
「自分の家族の場合、万一のときにいくら入ってきて、いくら不足するのか」
という視点から考えてみることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございます。
年金について、制度の仕組みから分かりやすくお伝えしています。
